ひとり親家庭への公的支援制度!手当や減免も解説

ひとり親家庭への公的支援制度

ひとり親家庭は、子育てと仕事の両立が必要なことからフルタイムで仕事ができないなど、経済的に不利な立場になりやすいといえます。

収入が苦しいと感じる人は、公的支援制度を活用して不安や葛藤を感じることのない生活を送れるようにしましょう。

ひとり親家庭が受給できる手当金・助成金

国や自治体は、ひとり親家庭を対象に手当金や助成金などの支援を行っています。

なお、紹介する制度の中には、ひとり親家庭だけでなく、子どもがいる家庭が対象になっているものもあります。

国からお金を借りる公的融資制度にもひとり親家庭向けの融資があるので、手当などの給付金で不足する場合には組み合わせて活用して下さい。

児童手当

児童手当は、ひとり親家庭だけでなく、子どものいる家庭が受けられる手当金です。

支給対象になるのは、0歳から18歳に到達する日以降の最初の3月31日までの子どもで、一般的には高校3年生までとなります。

令和6年10月から児童手当制度が改正されるのに伴い、支給対象が高校生までに拡大されます。

制度改正後の支給金額は以下のとおりです。

子どもの年齢第1子・第2子第3子以降
3歳未満15,000円30,000円
3歳以上高校生年代まで10,000円30,000円
出典:もっと子育て応援!児童手当|こども家庭庁 (令和6年10月以降)

支給タイミングは、これまで年3回でしたが、制度改正後は毎年偶数月の年6回になります。

児童扶養手当

児童扶養手当は、ひとり親世帯の子どもの生活の安定や自立促進を目的として支給される手当金です。

支給対象になるのは、18歳到達日以降の最初の3月31日までの子どもで、障害がある場合は20歳未満です。

支給金額は、親の所得により全額支給・一部支給・不支給のいずれかが決まります。

それぞれの支給金額は以下のとおり。

子どもの人数全額支給一部支給
1人45,500円45,490円~10,740円
2人10,750円10,740円~5,380円
3人目以降(※)10,750円10,740円~5,380円
出典:児童扶養手当について|こども家庭庁 (令和6年11月以降)

※令和6年度11月から2人目と同じ金額に改正される。10月までの支給額は、全額支給が6,450円、一部支給が6,440円~3,230円

所得制限限度額は前年の所得にもとづいて決定します。令和6年11月以降の二人世帯の所得の目安は、収入ベースで全額支給が190万円、一部支給が385万円です。

支給回数は、毎年奇数月の年6回です。

児童育成手当

児童育成手当は、ひとり親家庭の子どもの健やかな成長と福祉の増進を目的とした手当金です。

18歳到達日以降の最初の3月31日までの子どもや障害がある20歳未満の子どもを養育しているひとり親に支給されます。

手当名子ども1人あたり月額
育成手当13,500円
障害手当15,500円
出典:児童育成手当:新宿区

児童育成手当金を受け取れるのは、所得が一定金額以下の世帯で、扶養している人数により上限額が決められています。

児童育成手当は、東京都など一部の自治体で行われている手当金です。お住いの自治体に制度があるかは、自治体の窓口に問い合わせてください。

ひとり親家庭住宅手当

ひとり親家庭住宅手当は、18歳または22歳未満の子どもを養育しているひとり親世帯が、住宅を借りる際に家賃の一部を補助してくれる制度です。

自治体によって制度がないところがあり、利用対象者や手当金額も異なります。

たとえば東京都国立市では、国立市内に3年以上居住しており、児童扶養手当が全額支給で生活保護を受けていない人が対象です。

助成額は家賃の3分の1の金額で上限は1万円です。

神奈川県厚木市では、市内に居住しており家賃が1万円~6万円で、所得が一定額以下で生活保護を受けていない人が対象となっています。

助成額は最高1万円です。

ひとり親家庭等医療費補助制度

ひとり親家庭等医療費補助制度は、健康保険に加入しているひとり親家庭の子どもや親が、病院で治療を受けた際の医療費の一部を負担してくれる制度です。

利用できるのは、一定の所得金額以下の人で、生活保護を受けている世帯は対象外です。

自治体に申請すると、福祉医療証や受給券などを発行してもらえます。

病院を受診する際に福祉医療証を窓口で提示すると、負担金を差し引いた金額を支払えば済みます。

補助内容は自治体により異なるため、申請の際に確認してください。

子どもの医療費助成

子どもの医療費助成は、ひとり親家族向けの制度ではなく、条件に該当すれば子どもにかかる医療費の一部を助成してくれる制度です。

ただし、ひとり親家庭等医療費補助制度とは異なり、補助対象になるのは子どもだけです。

自治体によっては制度がないところもあり、あっても補助金額や子どもの年齢、所得制限などが異なります。

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、20歳未満の障害を持つ子どもを養育している家庭に支給される手当金です。

ひとり親世帯だけでなく、条件に該当する一般家庭も利用できます。

障害の程度によって1級・2級と認定され、手当金額は1級が月額5万5,350円、2級が月額3万6,860円です。

原則として、毎年4月・8月・12月に、それぞれの前月分の合計が支給されます。

受給できるのは、一定の所得条件を満たしている家庭ですが、たとえば子ども1人を扶養しているひとり親の場合、収入が686万2,000円以下まで対象なので、利用できる人は多いといえます。

障害児福祉手当

障害児福祉手当は、重度な障害を持つ20歳未満の子どもに支給される手当金です。

こちらもひとり親家庭だけの制度ではなく、条件に該当すれば受け取れるもので、特別児童扶養手当や子ども手当との併給も可能です。

支給月額は1万5,690円で、原則として毎年2月・5月・8月・11月に、それぞれの前月分までが支給されます。

ただし、受給するには所得条件を満たしている必要があります。

生活保護

生活保護は、生活が困難な人に対して必要最低限の生活を保障し自立を支援するための制度です。

健康上の理由や家庭の事情などで働けないことや、身内から援助を受けられないこと、資産を持っていないなどの条件を満たした人が対象です。

生活保護には、生活扶助や住宅扶助、教育扶助など8つの種類があり、該当するものが支給されます。

受給金額は、厚生労働大臣が定めた基準で計算した最低生活費から収入を差し引いた金額です。

最低生活費は、住んでいるエリアや世帯人数、年齢などにより異なります。

また、生活保護を受けている家庭は小学校・中学校の給食費や勉強に必要な費用を援助してくれる就学援助制度を利用できます。

遺族年金

遺族年金は、国民年金や厚生年金の被保険だった夫または妻が亡くなった場合に、遺族が受け取れる年金のことです。

亡くなった方が、自営業や個人事業主など国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金を、会社員や公務員で厚生年金に加入していた場合は遺族厚生年金を受給できます。

遺族基礎年金は、81万6,000円をベースに子どもの人数により加算額がプラスされます。

子どもの加算額は、1人目・2人目がそれぞれ23万4,800円、3人目以降がそれぞれ7万8,300円です(令和6年度)。

遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額が支給されます。

報酬比例部分とは、老齢厚生年金・遺族厚生年金などの計算のもとになる金額です。

ただし、遺族基礎年金・遺族厚生年金ともに、受給要件や受給対象者が決められているため、条件を満たしている必要があります。

ひとり親家庭が利用できる割引・減免制度

ひとり親家庭には、給付金や補助金だけでなく、保険料の減免や割引制度もあります。

給付金などを受け取り収入を増やす一方で、減免や割引を利用して支出を減らすことが、生活にゆとりを持たせるコツです。

国民年金の免除・猶予制度

所得が一定金額以下の人や失業などで国民年金保険料の納付が難しい人などは、保険料の免除や納付猶予を利用できます。

免除には法定免除と申請免除があり、生活保護を受給している人は法定免除の対象です。

申請免除は自ら申請し、所得に応じて、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除のいずれかが決まります。

ただし、免除を受けた期間は年金額を計算する際に減額されるため、10年以内に追納することをおすすめします。

国民年金保険料を未納のまま放置しておくと、万が一のときに障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れない可能性があるため、忘れずに手続きをおこないましょう。

上下水道料金の割引

自治体によっては、上下水道料金の割引制度を設けているところがあります。

利用条件は自治体により異なりますが、児童扶養手当や特別児童扶養手当を受給している人や、生活保護を受けている人などを対象としているところが多いです。

減免割合も自治体ごとに異なり、たとえば東京都では以下のように決められています。

  • 水道料金:基本料金と1か月あたり10m³までの従量料金の合計額に100分の110をかけた金額
  • 下水道料金:1か月あたり8m³までの料金

粗大ごみ手数料の免除

ひとり親世帯や生活保護世帯などを対象に、粗大ごみを収集する際の手数料を免除してくれる自治体があります。

詳細は自治体により異なり、利用回数が限られているところや、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機など家電リサイクル法の対象になるものは受付不可な自治体などがあります。

利用する際には、自治体の案内を確認してください。

保育料の減免

幼児教育・保育の無償化により、3歳から5歳までの子どもにかかる保育料は、世帯を問わず無料です。

0歳から2歳までの子どもには所得に応じて保育料がかかりますが、住民税非課税世帯は、0歳から2歳までの子どもの保育料も無料となっています。

ひとり親家庭に対しては、一定の所得以下であれば第1子は通常の保育料の半額に、第2子以降は無料になる自治体もあります。

離婚後の就職に役立つ資格取得の支援制度

ひとり親世帯の就職や転職、収入アップをサポートするために、有用な資格取得のための給付金制度があります。

自立支援教育訓練給付金

自立支援教育訓練給付金は、ひとり親家庭の経済的な自立を支援する制度で、20歳以下の子どもを養育している親で以下の条件に該当する人が対象です。

  • 児童扶養手当を受給中または同等の所得水準にある
  • 教育訓練を受けることが就職に必要と認められる

対象となる講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座と、都道府県の実情に応じて対象とされる講座です。

雇用保険制度の指定教育訓練講座には、看護師や介護福祉士、簿記検定、デジタル関係の講座などがあります。

対象となる講座を修了すると経費の60%が支給され、下限は1万2,001円、最大160万円までが支給されます。

高等職業訓練促進給付金

高等職業訓練促進給付金は、ひとり親が資格取得のために養成機関で修業している間の生活費を支援する制度です。

対象者は、ひとり親家庭で20歳未満の子どもを養育している親で、以下の条件に該当する人です。

  • 児童扶養手当を支給中または同等の所得水準にある
  • 養成機関で6か月以上のカリキュラムを修業し資格取得が見込まれる
  • 仕事または育児と修業の両立が難しい状況である

住民税非課税世帯の場合、訓練期間中は月額10万円が支給され、訓練期間の最後の1年間は4万円増額され14万円が支給されます。

また、訓練終了後は5万円が支給されます。