離婚を考えたときに、まず思うのが「離婚後の生活(収入)って大丈夫かな?」ですよね。
ご相談でも一番多いご質問です。
ご相談いただくときの状況は各ご家庭それぞれですが、たまに”コレ”についてじっくりお話しする機会があります。
それは、『離婚時の年金分割』。
ご相談者様の中でも、この年金分割について重要な注意点があり、じっくりお話しさせていただくのは、
- 結婚生活の中で、専業主婦や扶養内パート歴がほとんど。
- 夫が定年退職が近い、年金生活である。
- 年の差夫婦で、結婚歴が長い熟年離婚。
の場合です。
まり子
離婚時の年金分割って?
年金の制度を正確に丁寧にお話しすると、言葉が難しくなるので、簡単に表現させてもらいます。
離婚時の年金分割は
夫が受給予定、もしくは受給して振り込まれている年金(お金)を分けてもらえるのではなく、夫が納付していた厚生年金の記録を分ける。
というものです。
例えば、太郎さん・花子さんご夫婦の例で考えてみましょう。
上の図のように
結婚 | 夫:太郎さん37歳、妻:花子さん26歳。 年の差11歳のご夫婦。 太郎さんの転勤に伴い結婚したので、結婚後から花子さんは専業主婦に。 |
出産 | 夫:太郎さん40歳、妻:花子さん29歳で第一子出産。 夫:太郎さん44歳、妻:花子さん33歳で第二子出産。 第二子が小学生になるまで、花子さんは専業主婦。 |
仕事 | 夫:太郎さん51歳、妻:花子さん40歳。 花子さんが、夫の扶養内でパートを始める。 |
離婚 | 夫:太郎さん65歳、妻:花子さん54歳。 太郎さんは、会社を定年退職し、年金を受け取り始める。 花子さんが、離婚を考える。 |
というご夫婦がいたとします。
花子さんは、26歳で結婚してから、54歳で離婚を考え始めるまで、専業主婦もしくは扶養内のパートで、28年間夫の扶養に入っていた状態です。
この期間は、花子さんは、国民年金の保険料は家計から支払っていませんが、第3号被保険者という制度で、老後に国民年金は受給できます。
でも、厚生年金の保険料は支払っていないので、厚生年金の上乗せはなく、老後の公的年金は国民年金だけになります。
そこで、離婚時に年金分割制度を利用すると、太郎さんの厚生年金の記録(老後に受給できる厚生年金の計算のもととなる標準報酬)を花子さんは分けてもらえ、老後にその分の厚生年金が受け取れるようになります。
ここでは、太郎さんから花子さんへの年金分割の場合のみを書いていますが、妻にも婚姻期間中に厚生年金記録があり、夫より年金記録が多い場合は、妻から夫への分割の場合もあります。また、分割するのは、婚姻期間中分のみで、結婚前の太郎さんの記録は太郎さんのままです。
年の差夫婦の年金分割には注意が必要
では、この花子さんの場合、どんな点に注意が必要なのでしょうか?
- 太郎さんが受け取り始めた年金(お金)を分けるわけじゃない。(花子さんは65歳まで分割した年金は受け取れない)
- 年金分割をした時点で、太郎さんは分割分、年金額が減る。
- 養育費への影響(第二子がまだ学生で、授業料等が必要)。
この例の花子さんが離婚しようと思ったとき、太郎さんは定年退職して年金を受け取り始めています。
『年金分割』という言葉を見ると、「太郎さんが受け取っている年金を半分くらいもらえるのかな?」と思われるのではないでしょうか。
でも、先ほどご説明した通り、年金分割は、受け取っているお金を分けるのではなく、記録を分けるものです。
なので、上の図のように、花子さんが54歳で離婚して年金分割の手続きをすると、花子さんが65歳までの間、年金分割による収入の増加はありません。
なのに、太郎さんは年金分割によって、受給できる年金額は減ってしまっています。
そうなると、まだ第二子が大学生で授業料等があるのに…という状況になりかねません。
では、「花子さんが65歳になってから、年金分割の手続きをすれば…!」と思われるかもしれませんが、年金分割の手続きは離婚後2年間と期限があります。
まり子
離婚のタイミング、どうする?
ご夫婦の協議で、「年金分割の手続きをせずに、太郎さんからその分、離婚後も生活費をもらう」という方法もあるでしょう。
ですが、そうすると、太郎さんに万一のことがあった場合、そこで年金の受給は途絶えてしまいます。(花子さんは離婚していますし、お子さんは成人しているので、遺族年金もありません。)
離婚を考えた理由にもよりますが、
- 今一度、本当に離婚が最善の選択か、再構築の余地はないか考える。
- 離婚せずに別居で様子を見る。
ということも考えて、離婚するにしてもタイミングを見計らうことが必要です。
また、将来離婚もありえるかも…と、このページを訪れた年の差夫婦の方は、この離婚を考えた時点で「どうしよう…!」となることを避けるためにも、老後に向けて長期的に資産形成や働き方を考えるきっかけにしてもらえると幸いです。
今回は、極端な例かと思いますし、ご説明もポイントを押さえたざっくりとしたものになっています。
もし、ご自身のパターンだとどうなるのだろう?と思われましたら、お気軽にご相談くださいね。