米津玄師くんの新曲が出ました。
『Lemon』
ドラマの主題歌にもなっていて、ドラマも曲も非常に好評でしたね。
…多分。
すみません、ドラマは見ていません。ドラマ、苦手なんですよね。
指定された時間にテレビに向かわなくちゃと急かされる感じと、何度もいいところで「続く」ところが。。。私は続かない映画が好きです。
なので、ドラマの時間付近の米津玄師くんのツイートで、ドラマを勝手に妄想していました。
『Lemon』のCDは手にし、胸締め付けられる切なさにキュンキュンしています。
そんな、Lemonで始めた今日のブログですが、Lemonの感想ではなく、昨年発売されたアルバムの感想を書かせてもらいます…!
私の復活の呪文は心にクル上がる曲
本当は前回のブログで、一番新しいアルバムの『BOOTLEG』の感想を書こうと思ってたら、「米津玄師くんが好きすぎる」ということだけ書いて終わりました。
今度こそ!
…の前に。人生における ”復活の呪文(ふっかつのじゅもん)” 持ってますか?
私は持ってます。復活の呪文。
離婚の話を元夫と話し合っていたときに、元夫に
「いいよね、まりちゃんは!復活の呪文持ってて!」
と、妬み、僻まれた『復活の呪文』。(復活の呪文唱えなきゃなんないのは、たいていこの元夫のせいでしたけどね)
それは、とことん落ち込んだとき。マントルまで埋れても、これさえあれば地上へ復活できるほど気分をあげてくれる何か、です。
それだけ?と思われるかもしれませんが、「どんな時でも復活できる」って、なかなかすごいです。
一文字間違えたら復活できない危うさを持った、あの本当の「ふっかつのじゅもん」より、断然強力です。
お金がないと生き返らせてくれない教会の神父さんよりすごいです。
もう私は、ザオリクと世界樹の葉を手にした勇者です。(ドラクエわからない方、ごめんなさい!)
なんて、どうでもいいのですが・・・元夫の海外赴任に帯同して、悪化していた夫婦関係と日中関係に悩まされた私の心の拠り所が復活の呪文、私にとっては復活の”曲”でした。
その復活の曲はこちら。
ちょうど、このワールドツアーに私は上海で行けまして。
子どもに気付かれないように、布団に包まって声を殺して泣き続けた日々を乗り越えることができました。
普段、「好きな曲は?」と聞かれたら、別の曲を答えたりするんですが、復活のためにはこの曲じゃないとダメなんですよね。
そんな私に、もう一曲、復活の呪文が追加されました…!
オマージュ、そしてやっぱり”らしさ”
前置き長くてすみません。
ようやく米津玄師くんに戻ってきました。
新アルバム『BOOTLEG』を聴いていて、たまに「あ、ここ。」とか感じていた何かに答えが出たのが、音楽ナタリーのインタビュー。
リンク先・画像出典ともに、音楽ナタリー「米津玄師:オリジナルってなんだ?”海賊盤”に詰め込んだ美と本質」
このインタビューで、本作に関しての「オリジナリティ」と「オマージュ」について答えていて、感じていた「あ、ここ。」がわかりました。
例えば、大好きな『かいじゅうのマーチ』の歌詞の中の一コマ。
今日の日はさようならと あの鳥を見送った
いつまでも絶えることなく
友達でいよう
信じ合う喜びから もう一度始めよう
(米津玄師 『BOOTLEG』”かいじゅうのマーチ”から抜粋)
これを聴いて、「あー、インタビュー探そうっと。きっと答えがあるはず。」と見つけたのが、これ。
今回のアルバムは、自分の中ではオマージュのアルバムだと思っているんです。
〜中略〜
それは自覚的にやっているんです。それをやることによって過剰なオリジナリティへの信仰みたいなものに対して自分なりに解答を出したかったっていうのがあります。
(音楽ナタリーインタビューから抜粋)
そして、この後、「俺はオリジナリティなんてどうでもいいと思っている」という言葉もありますが、結果として、なんかやっぱり米津玄師くんらしいアルバムに仕上がっているんじゃないかなぁと感じました。勝手に。
そんな中、今、鬼リピしている曲が、復活の呪文になると感じている
『Nighthawks』
愛しさと、切なさと、心強さ・・・なんだか違う曲になってしまいそうですが、まさにそれらを兼ね備えた感じです。
美しく伏線を拾う『Nighthawks』
Nighthawks・・・鷹?戦闘機?と思いつつ、検索して「これか!」と思ったのが、エドワード・ホッパーの絵画。ウィキペディアの「ナイトホークス(美術)」にありました。
音楽ナタリーのインタビューでは、Nighthawksに対するコメントはさらっとしていたのですが、探してみたら、エドワード・ホッパーからタイトルを付けたと別のインタビューでしっかり書かれていました。
billboard JAPAN 米津玄師『BOOTLEG』インタビュー
こういう制作過程の部分を知るのも楽しいですが、私がこの曲の一番好きなところは、歌詞の美しさ。
米津玄師くんもよく「美しい」という表現を使いますが、私もいろんな意味で「美しい」言葉だったり、状況だったり…が好きです。非常に広義で使っていますが。
米津玄師くんの歌詞やインタビューを読むと、ラフな感じも結構あるんですが、文章の流れや単語や言葉の選び方・並べ方を美しいなと感じることが多々あります。そんなところが好きですね。
で、まず最初にグッときたのがサビの歌詞。
何もないこの手で掴めるのが残りあと一つだけなら
それが伸ばされた君の手であったほしいと思う
切ない曲調と”何もない”で始まるフレーズがピッタリで、思わず何も持っていない自分の手を見つめてしまうような入り。
そして、あと一つしか掴めない中、求めるのが”君の手”。しかも、伸ばされた君の手。
求めているものが明確で、求められたい気持ちも明確で、その”君”に私がなりたい。
そして、その先の未来に対して…
あまりに綺麗だと恐ろしいから汚れているくらいがいい
ああ それくらいでいい 僕らの願う未来
”あまりに綺麗”が恐ろしいという感情って、表現が難しいけど、すごくわかります。
汚れているくらいが、自分もそこに行っていい、居ていい、そんな感じがするんですよね。
そして2番のサビでは
当てのない未来ならいらないんだと目を閉じて叫んだ奥に
転げ回ってまで望む君との未来があった
目を閉じて叫ぶ。転げ回ってまで望む。
どうしようもないほどの絶望と渇望が伝わってきて、本当に表現がいいと思います。やっぱり”君”になりたい・・・。
そして、Cメロでチラッと出てくる「手の鳴る方へ」にホッコリ。頭の中に蛍がよぎります。
前奏なく、弦楽器だけをバックに静かに、でも焦燥感を感じさせつつ始まるこの曲。
上に書いたサビの歌詞の表現の良さと、それに合った曲調に惹かれましたが、始まりと終わりに気付いて「素晴らしい!」と思わず呟きました。
あの日 眠れずに眺めてた螺旋のフィラメント
退屈な映画のワンカット 半開きのドア
もしも このまんま明日が来ないならどうしようか?
このAメロの4行目の歌詞が、一番最初のAメロでは、
朝が来て全部終わってたら 僕はどこへ行こう
それが、この曲はAメロで終わるんですが、最後のAメロでは、
それなら笑って過ごしたい 君に会いに行こう
張った伏線をしっかり回収して終わる、この素晴らしさ。
しかも、最後のAメロでは、今までの全ての音が乗っていて、色鮮やかに躍動感さえ感じられる希望ある終わり方。
そして、いつも思いますが、ベースのアレンジがとっても好きです。
最初に挙げた復活の呪文の曲(ラルクのマイハー)は、包み込んでくれるような温かさを感じますが、こちらは落ちている気持ちを流れのままに押し上げてくれる感じがします。
音楽ナタリーのインタビューで、この曲は「中高校生くらいのときに心の大半を占めていた、自分に対してどうしたらいいかわからない焦燥感や不安や怒りを思い出しながら作った曲」と答えていますが、それに終始するのではなく、美しく回収するのが米津玄師くんの曲の良さだと感じています。
全体的にストーリー性があって、まるでショートフィルムを観たかのような達成感さえ感じる、この一曲。
そう。アルバムの感想と言いつつ、一曲の感想で終わりましたが、ぜひ、私の周りの方に聴いていただきたいです…!
そして、一緒にライブに行きましょう!